【書評】『替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方』の要約・レビュー
今回は国分峰樹さんという方が書かれた、『替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方』という本についてまとめました!
本書では、「一度専門性を身につける方法を体得すれば、さまざまな分野に横展開して使うことができ、どこへ行っても通用する人材になれる」と強調した上で、専門性を身につける方法を解説しています。
テクノロジーの発展が目覚ましい今、「ビジネスパーソンとして生き残るにはどうすればいいか?」と悩んでいる方へのヒントになると思いますので、興味のある方はぜひこちらの記事を参考にしてみてください。
目次
著者の紹介
著者である国分峰樹さんは現在、株式会社電通のビジネスプロデュース局の部長を務めながら、東京大学大学院博士後期課程に在学中です。
過去には以下の学位を取得しており、
さらに、以下の大学などで非常勤講師も務めています。
とんでもない経歴の持ち主ですね。
ビジネスだけでなく、学術においても広範な知識と経験を持っていることが、著者の大きな特長だと思います。
要約
本書で大切だと思ったポイントを、私なりにまとめてみました。
本書で書かれている順番と前後するところもありますが、ご了承ください。
専門性とは何か
本書では専門性とは、「新しい専門知識を生み出すこと」と定義しています。
言い換えると、既存の専門知識をインプットすることは専門性とはいえません。
なぜでしょう?
それは、ネットやAI(ChatGPTなど)の発達により、誰でも情報を手に入れやすくなったため、ただ情報を知っていることの価値はなくなってきているからです。
一方、抽象的な概念を生み出すなど創造的な思考をするのは、AIよりも人間のほうが優れています。
これからの時代にビジネスパーソンとして生き残るためには、創造的な、人間ならではのやり方で専門性を身に付けることが大切です。
専門性を身に付ける方法
自分が本当にやりたいと思えることを見つける
専門性を身に付けるには、「やりたい」という気持ちを推進力にして取り組むことが一番の近道です。
逆に、お金や周りからの賞賛といった打算的な動機や、「やらなきゃ」「やったほうがいい」というような義務感で取り組んでも、「新しい知識を生み出す」ことはできません。
そのため、まずは自分が心からやりたいと思えることを見つけることが大切です。
自分らしい問いを立てる
やりたいことを見つけたら、今度は自分らしい問いを立てましょう。
自分らしい問いとは、「自分ならではの視点を疑問の形で表現したもの」です。
本のタイトルを例に挙げると、『文系と理系はなぜ分かれたのか?』はお手本のような問いです。
では、なぜ自分らしい問いを立てる必要があるのでしょうか?
それは、自分で問いを立てない人は、ずっと誰かに与えられた課題に取り組むことになり、将来的にAIに仕事を奪われてしまう恐れがあるからです。
自分らしい問いとは自分の興味・関心や問題意識から来るものであり、それらを持たないまま専門性を身に付けることはできません。
本から体系的な知識を得る
問いを立てたら、その問いをもとに、本から体系的な知識を得ましょう。
ネットやChatGPTなどの検索システムではなく、本から学ぶというのがポイントです。
なぜなら、検索システムから得られるのは断片的な情報であり、知識とはいえないからです。
本書では、知識とは「個々の情報が関連づけられていて、体系的にまとめられたもの」と定義しています。
本を読むことで、著者が様々な情報をどう関連づけ、体系化しているかがわかります。
そのため、検索システムよりもはるかに深く、効率的に専門知識を得ることができるのです。
論文を読み、知識を差別化する
論文を読むことで、その専門領域で最先端の知識を得ることができます。
多くのビジネスパーソンは論文を読まないので、論文を読むことで知識の差別化につながります。
さらに、最先端の知識を得ることにより、「何がわかっていて何がわかっていないのか」がわかるため、自分の問いにオリジナリティがあるかどうかがわかります。
自分の問いにオリジナリティがあるかは、新しい専門知識を生み出す上で重要です。
論文を読むのに抵抗がある方もいるかもしれませんが、論文は本よりも「多様」「詳細」「短い」というメリットがあります。
Google Scholarを使えば誰でもネットで簡単に読めるので、そこまでハードルは高くありません。
(論文の効率的な読み方は本書に書いてあるので参照してください。)
自分の意見を意識的につくる
知識をつけたあとは、自分の意見をつくることが大切です。
ここで「意見を持つ」ではなく、あえて「意見をつくる」としているのは、自分の意見は自然と出てくるものではなく、意識してつくるものであると強調するためです。
例えば、議論の場で他人の意見を聞いた時に、異論も反論もせず議論に貢献できないまま無言で同意した感じになるシーンはよくあると思いますが、これではオリジナリティを発揮できません。
自分のオリジナリティを出すには、自分の意見と他人の意見の違いを明確にし、積極的に「何か発言してやろう」と意識することが重要なのです。
多様な人々と議論する
自分の意見をつくったら、次は多様な人々と議論してみましょう。
自分と考えが違う人の意見を聞くことで、1人では得られない知見を得られます。
15世紀のフィレンツェでヨーロッパ中の文化人が自由に交流し多彩な文化が花開かれたように、新たな発見は多様な意見が交わることで生み出されます。
ネットで調べれば簡単に情報を得られる現代では特に、議論することの意義は大きいです。
感想・レビュー
続いて、本書を読んで私が個人的に感じたことをまとめます。
著者の情報収集力・構造化力が高い
まず本全体の感想として、良い意味で引用の多さに驚きました。
本書の内容は様々な本や論文だけでなく、経団連や文部科学省から得た情報も踏まえて論理が展開されています。
本書ができあがるまでに、とんでもなく多くの情報の取捨選択と思考を経たのではないかと想像すると、著者の情報収集力や構造化力がすごいと思わざるを得ませんでした。
本書に「個々の情報を関連付けて体系化するところに著者の個性が表れる」といったことが書かれていましたが、膨大な情報を著者なりにどう抽出し、体系化しているかを知る意味でも読む価値があると思いました。
やりたいことを見つけるのは大切だけど難しい
本書で「自分がやりたいことでないと専門性を身に付けるのは難しい」とありますが、そもそもやりたいことを見つけるのって難しくないですか?
もちろんやりたいことが明確にある人もいますが、私の周りでは自分が何をやりたいかわかっていない人のほうが多くいる気がします。
私自身も興味があることはたくさんあるのですが、努力を努力と思わず、積極的に自分の時間を投下してまでやりたいと思えるレベルのことは見つかっていません。
やりたいことを見つけるのは大切だけれど、見つけるまでが一番難しいなあと感じました。
仕事でも家庭でも、身近なところから問いを立てれば良い
個人的に、本書でいう専門性は割と学術的なことを指している印象を受けました。
でも私は、専門性を身に付けることは、大学や大学院でなくてもできると考えています。
また、そこまでちゃんとしたやりたいことを見つける必要もないと思うのです。
専門性が単なる知識ではなく、新たな知識を生み出すこと自体を指すのであれば、「いかに新たな知識を生み出す経験をしてきたか」が重要になると思います。
だとすれば、「仕事でも家庭でも身近なところで問題意識を持ち、自ら問いを立てて探究すれば、専門性は身に付く」というのが私の意見です。
例えば、今上から言われたことだけをこなす仕事をしている場合、このままだとAIに仕事を奪われる可能性が高いです。
でも、「どうしたら仕事の効率を上げられるか」などの問いを立て、探究することで、新しい知識を生み出せると思います。
専業主婦でも、「どうしたら今の暮らしをもっと快適にできるか」などの問いを立てることはできるはずです。
世の中には、同じ人間も、同じ会社も、同じ家庭も存在しません。
それぞれは必ずオリジナルなので、ある環境で得た知識を別の環境でそのまま適用するのは難しいです。
オリジナルな人・会社・家庭などの中で、それぞれに最適化した新しい知識を生み出していけば、専門性につながるのではないかと思いました。
おわりに
書評を書くのが初めてなので読みづらい点もあったかと思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございました!
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